50代になったら歯の残数を意識しましょう
80歳まで20本以上の歯を残すことを目標にした8020(ハチマルニイマル)運動。その達成者がようやく50%を超えるようになりました。日本人の歯周病・虫歯への予防意識が高まっている証拠です。とはいえまだ50%。しかも80歳というとなかなか現実味が湧かないという方も少なくないかもしれません。けれども歯の喪失は、50代という比較的早い時期から始まるものです。
50代の時点でどれくらいの歯が残っているか、あるいは歯の喪失を防ぐことができるかによって、その後の口腔環境が決まるといっても間違いではありません。それだけに50代になったら、ご自身の歯の残数を意識しながらお口の健康と向き合ってみてはいかがでしょうか?
50代女性の平均的な歯の本数
50~54歳の女性 | 26.9本 |
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55~59歳の女性 | 26.2本 |
厚生労働省が5年に1度実施している歯科疾患実態調査では、各年代の「1人平均現在歯数」を調査し、報告をしています。これはお口の中に残っている平均的な歯の本数を表す数値です。令和4年度に実施された最新の歯科疾患実態調査では、40~44歳の女性は27.6本、45~49歳の女性は27.7本という結果が出ており、ほぼすべての永久歯が残っていることがわかります。というのも私たちの永久歯は、親知らずを除くと全部で28本あるため、40代の女性では歯を1本失っている人の割合の方が少数派となっています。
それが50代になると変化が見られます。50~54歳の女性は26.9本、55~59歳の女性は26.2本という値が出ており、平均として50代の女性では1~2本の歯を失っていることがわかります。つまり、女性は50代になるといよいよ歯を失うフェーズへと突入するのです。65~69歳では23.9本、70~74歳では21.7本と、年齢が高くなるほどに、歯を失うスピードも増していく点に注意が必要です。
50代女性が歯を失った場合の治療法
50代女性では、平均的に1~2本の歯を失っており、欠損部を補う補綴治療(ほてつちりょう)が必要となるケースが多いです。補綴治療はインプラント・ブリッジ・入れ歯の3種類があり、それぞれ特徴や適応症が異なります。
インプラント
歯の欠損部にチタン製の人工歯根を埋め込んで、上部構造と呼ばれる人工歯を装着する治療法です。失った歯を歯根から回復できる唯一の治療法であることから、50代女性で歯を失った方にも強く推奨できます。50代であればまだまだ骨もしっかりしていて、全身状態も良好であることが多いので、外科手術を伴うインプラントも適応しやすいです。インプラントなら、審美性・機能性・耐久性に優れた歯が手に入ります。
ブリッジ
ブリッジは、欠損部の両隣の歯を支えとして、橋(ブリッジ)のような形をした補綴装置を装着する治療法です。固定式の装置なので比較的噛みやすく、見立ても自然です。欠損部にはポンティックと呼ばれるダミーの人工歯が配置されるだけなので、インプラントのような機能性や耐久性は獲得できませんが、1~2本の歯の欠損症例には適した治療法といえます。ただし、支えとなる歯は大きく削らなければならないばかりか、多くの負担を長期に渡りかけなければならないことになります。
入れ歯
入れ歯は、3つの治療法の中で唯一、着脱式の装置を使います。数本の歯の欠損を補う部分入れ歯は、人工歯という白い歯とピンクの部分である義歯床(ぎししょう)、残った自分の歯に引っ掛ける金属製の金具から構成されます。残った歯を大きく削ったり、外科手術を行ったりする必要はありませんが、装置が目立ちやすかったり、違和感が強かったり、食事や会話の時にずれたり外れたりする、噛みにくいなどのデメリットを伴います。
50代女性が歯を失う原因
女性の歯の喪失は、50代から加速していきますが、その原因は何なのか疑問に思われている方も多いことでしょう。答えは「歯周病」です。日本人が歯を失う原因の第一位は虫歯ではなく歯周病なのです。
歯周病で歯を失うメカニズム
歯周病は、歯肉炎と歯周炎の2つに大きく分けられます。歯肉炎は歯茎が腫れて、歯磨きの時に出血するなどの症状が見られますが、治療を受けることで元の状態に戻せます。それが歯周炎へと移行すると、歯茎や歯根膜、歯槽骨が破壊されるために元に戻ることない状態へとなってしまします。
歯茎や歯槽骨は歯を支えている組織なので、歯周病によって壊されると歯の動揺を招き、最終的には抜歯を余儀なくされます。もちろん、歯周病が末期に至ると歯が自然に脱落することもあります。しかも歯周病は、40~50代にかけて重症化しやすくなっていくのです。
歯を1本でも多く残すために
歯周病は、歯垢や歯石が長期に渡りついたままになることで、歯周組織に炎症反応をもたらす病気なので、これらがついていないような良好な口腔衛生状態を保つことで予防しやすくなります。具体的には、以下の方法を実践して、歯周病菌が住み着けない清潔な口内環境を構築しましょう。
【方法1】セルフケアを充実させ、自ら積極的に衛生的な口元を作る
歯磨きは、適切な方法・時間で行うようにしてください。正しい歯磨き方法は、歯科医院で学べます。この学びを、歯科衛生士を二人三脚で強めていくことこそが第一歩となります。
【方法2】定期検診を受ける
いくらセルフケアを頑張っていても、そこは人間ですから磨き残しは存在するものです。そこを、決められた期間で定期的に専門家である歯科衛生士が見てアドバイスすることが歯周病を予防することに大きくつながります。
【方法3】歯周病のリスク因子を取り除く
歯周病は、以下に挙げる因子によって発症リスクが高まります。
- ・喫煙
- ・糖尿病
- ・骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
- ・ホルモン異常
- ・口呼吸
- ・ストレス
- ・慢性的な疲労
- ・適合の悪い補綴物
- ・不規則な食習慣
この中で当てはまるものがある場合は、今日からでも改善するよう努めましょう。歯周病は、生活習慣病です。“歯ブラシ”という日々の習慣を改めるだけでも発症リスクを下げられます。
参考URL:令和4年度歯科疾患実態調査 1人平均現在歯数