歯科治療では、皆さんが想像している以上に多くの場面で歯を削ることがあります。ケースによっては、「勝手に歯を削られた」と感じることもあるかもしれません。皆さんもよくご存知のように、天然の歯質はできる限り削らず、残した方が良いといえます。
そうしたトラブルを防ぐためには、どんな歯科治療で歯を削る必要があるのか知ることが大切です。また、歯を削った場合のメリットとデメリットについて正しく理解しておく必要があります。

できるだけ歯を削らない方がいい理由
歯を構成するエナメル質と象牙質は、原則的に再生することはありません。歯の内側で象牙質が一部、新たに作り出されることがありますが、外側の歯質は損傷すると元には戻らないのです。唾液による歯の再石灰化は、エナメル質の傷を修復して、強くする作用は期待できるものの、ドリルで削ったり、外傷で欠けたりして生じた欠損部が元通りになることはないのです。つまり、歯科治療で歯を削るたびに、あなたの歯は脆くなり、寿命が縮まることを意味します。これができるだけ歯を削らない方がいい理由です。
歯を削る必要がある5つのケース
歯科治療では、次の5つのケースで歯を削る必要性が出てきます。
【ケース1】虫歯治療で歯を削るケース
虫歯菌に感染した歯質は、削る以外に完治させる方法がありません。歯というのは特殊な器官で、生体に備わっている免疫機能が適切に機能しにくいのです。
皮膚や粘膜、その他の臓器などに感染が起こった場合は、免疫細胞が集まってきて、細菌を排除できますが、歯の構造上、生体防御の機能が十分に働かないことから、感染部を物理的に除去することになります。

【ケース2】ブリッジ・入れ歯治療で歯を削るケース
失った歯を補うためのブリッジでは、支えとなる支台歯(しだいし)を大きく削らなければなりません。その量は、一般的な被せ物治療と同等です。基本的には、欠損部の両隣の歯を合計2本削ることになります。ブリッジと同じ補綴治療の一種である入れ歯でも、実は歯を削ることがあります。
具体的には、入れ歯の沈み込みを抑えるために付与されるレストを置く部分やクラスプを引っ掛ける部分の歯質を便宜的に削らなければならない場合があるのです。その量は極めて少ないため、歯に大きなダメージが及ぶことはまずありませんが、勝手に削られないよう注意する必要があります。

【ケース3】セラミック治療で歯を削るケース
審美目的でセラミック治療を受ける場合は、健全な歯質を大きく削ることが多いです。例えば、前歯の色や形、大きさなどを改善する目的でオールセラミッククラウンを装着する場合は、進行度の高い虫歯と同じくらいの量の歯質を削って、被せ物を装着します。
ラミネートベニアと呼ばれる装置なら、前歯の表面のエナメル質を一層削るだけで装着できるため、歯質の損失を最小限に抑えられますが、ゼロにすることは難しいです。

【ケース4】矯正治療で歯を削るケース
矯正治療では、スペースが不足しているケースで歯を削ることがあります。専門的には、「ストリッピング」「IPR」「ディスキング」などと呼ばれる方法で、歯の両側面を0.5mm程度ずつ削ります。歯の切削範囲は、エナメル質内にとどまることから、歯に大きなダメージが及ぶことはありません。

【ケース5】噛み合わせの調整で削るケース
特定の歯が強く当たっていて、全体の噛み合わせが悪くなっている場合は、歯を削って調整することがあります。これを咬合調整(こうごうちょうせい)といいます。咬合調整で削る歯は人工歯が優先されますが、天然の歯質を削らざるを得ないこともあります。その時に歯医者で歯を勝手に削られたと感じるかもしれません。

歯を削るメリット・デメリット
天然の歯質を削る処置には、次に挙げるメリットとデメリットを伴います。
メリット
- ・虫歯を完治させることができる
- ・ブリッジや入れ歯を適切に装着できる
- ・歯の審美性や機能性を向上させることができる
- ・矯正における抜歯を回避できる
- ・噛み合わせを改善できる
デメリット
- ・削った歯質は元に戻せない
- ・歯が脆くなる
- ・歯がしみる知覚過敏のリスクが高まる ・虫歯になりやすくなる
- ・歯の形が悪くなることがある
- ・歯の神経を抜かなければならなくなることがある
こんな時は削る?削らない?
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初期の小さな虫歯
虫歯は、原則として削らなければ治せない病気ですが、初期の段階であれば削らずに進行を止められることがあります。厳密には「初期う蝕(CO)」と呼ばれる段階で、歯面にはまだ穴が開いていません。歯の内部で歯質が溶ける表層下脱灰(ひょうそうかだっかい)が起こり、白いシミが現れます。
この段階なら、フッ素塗布を行うことで、歯に穴が開くのを防止できます。ただし、セルフケアとプロフェッショナルケアを両立させて、プラークコントロールを徹底する必要があります。口腔ケアが不十分だと、虫歯菌の活動が進行して歯に穴が開き、虫歯を削る必要が出てきます。
クリーニング
定期検診・メンテナンスで行うクリーニングは、電動のブラシと研磨剤を使って歯垢やバイオフィルムを除去する処置で、歯が削れることはありません。先端が鋭利な器具を使って歯石を取るスケーリングは、石のように硬い歯石をガリガリと削り落とす処置です。施術中は歯茎から出血したり、キーンとしみたりすることもあるため、歯が削れているのではないかと不安に感じるかもしれませんが、この点もご安心ください。
歯科医院でスケーリングを行えるのは、国家資格を持った歯科医師と歯科衛生士のみであり、歯が削れないように処置を施すことが可能です。ただし、一般の方が市販のスケーラーを使って自己流にスケーリングをすると、ほぼ間違いなく歯や歯茎を傷めることになりますので、十分にご注意ください。
健康な歯を削らないですむように
このように、歯を削らなければならない場面は、虫歯治療以外にもたくさんあります。ケースによっては歯の切削が少量にとどまることから、無断で削られる可能性もゼロではありません。また、選択した治療法の性質上、虫歯などの異常がない健康な歯質を大きく削らなければならないこともあるでしょう。
それは患者さんの歯において、必ずデメリットも伴うことから、できれば歯を削らずそのままの状態で噛む機能を維持したいものです。その上で有用なのがメンテナンスです。3~4ヵ月に1回の間隔でメンテナンスを受けていれば、虫歯を初期の段階で発見しやすくなります。クリーニングやスケーリングを受けることで、歯周病のリスクも下がり、歯を失う可能性も低くなります。
アウルデンタルクリニックからのメッセージ
当院のメンテナンスでは、口腔ケアや生活習慣の指導も受けられるため、お口や全身の健康維持・増進にもつなげられますので、歯医者に歯を勝手に削られたくない方はもちろん、虫歯や歯周病とは無縁の生活を送りたいという方はお気軽に松戸新田のアウルデンタルクリニックまでご連絡ください。
当院はメンテナンスに力を入れている歯医者さんです。
